■ザ・キッズムービー新作
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本当は上映直前まで、結構ごたごたしていたのだ。「キッズムービー」の上映会はほとんどが出演した子ども達の関係者でしめられるため、編集は意識的に「ゆるめ」にしてある。というのは親達にとってちょっとでも長く自分の子供が観たいだろうというおせっかいな配慮からであるが、作品的にはカットを入れ替えたり、もっと短くしたりした方が良くなることはスタッフ全員理解している。その意味では満足のいく作品になったと思う。
では、何が引っかかったのか。ちょっと抽象的になるが、言いたいのは「映画的」に見てどうかということである。年寄りくさくて申し訳ないが、今の人たちは映画よりもテレビに慣れている。予算的な関係で「キッズムービー」はフィルムで撮っているわけではないが、やはり「映画」として「こだわり」たいのだ・・・。
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上映前はいつもドキドキするようなわくわくするような、この気持ちはかつて劇場映画時代の封切日からもう何百回と経験しているはずなのだが、絶対に慣れることはない。
スタッフHと撮影監督のU君はコントロールルームに閉じこもってバタバタしている。子供の映画と言われようが、なんといってもちゃんとした劇場上映なのだ。キャパは250席。小劇場よりずいぶん広いんじゃないか。しかも市美術館のホールだからへたな映画館よりもはるかに立派な造りである。映画の出来不出来は劇場環境にもあると常々思っているから劇場選びは大切だ。
受付のイスに座って段取りの最終チェック。今回は開場前というのに前回に比べ、随分のんびりしている。実はM子のほかにもスタッフが増えている。まず、すでにベテランのN君、子ども達の写真を撮っているMさん。それに、見るからにスポーツマンのK君。みんな黙々と自分の仕事をこなしている。
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暑さと過密スケジュールでみんなくたくたである。子供たちは無事自分の出番を終了し帰ったので、残ったのはスタッフだけである。船着場に着いたがみんなあまり喋らない。
気がつくとスタッフHとN君の姿が見当たらない。帰りの車の中で「ビールがうまそうだとか、焼きサザエのにおいがする」とか言ってたから、きっとその辺で飲んでいるのだろうと納得する。彼らは車じゃないから、まっ、いいか。そのてん車組は気の毒だ。特に撮影監督のU君はこれからまた仕事だそうで、ほんとにご苦労様です。
船のデッキにもたれ、潮風に吹かれていたら、夕陽がしっかり日焼けした腕にあたってひりひりする。しかしそれもいまは心地よい・・・。
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こちらの丘には燃えるような大きく真っ赤なケイトウが咲き乱れている。そのなかをふたりが走る。すでに「お花の国」での経験を生かしてこちらの組には「たくさん歩くよ」と納得してもらっての撮影開始である。真っ赤なケイトウの咲く丘が終わると海に突き出した広場へと移動する。
ふたりとも小学2年生。ところがなんと、ひとりは空手の形をひと通りやり終えると、自分で振付けたダンスを踊ったのだ。もうひとりは「バトンダンスをやるからお空を飛んでるように撮って!」と注文を出すとロケの最後には川柳まで読んでしまった。多才だよね。僕が小学2年生の頃、何やってたっけ?
しかもこのふたり、ものすごく明るくて初対面から大親友になってしまった。もう一度言うが何てったって、たったの7才だよ。
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撮影場所でリハを始めた途端、「お花が少なくて踊れない!」。それが第一声だった。要は花の咲き乱れる中でバレエを踊ろうと決めていたのに、期待に反し花が少なかったのだ。本当に子供はあなどれない。前にも言ったがこちらが勉強になる。
「わかった、かなり歩くけどいいかい」。意中の場所はあったが、この猛暑のなかそこまで歩かせるわけにはいかないと遠慮していたのだ。太陽の照りつける中バレリーナの衣装のまま歩き始めた。彼女たちの両親やスタッフをいれると長い列が出来た。
目的地に到着。海をバックにあたり一面、黄色のケイトウが。見渡す限りの花々。文字通り「お花の国」である。
「ここなら踊れる?」と聞くと嬉しそうにうなずき、ふたりは暑さをもろともせず力いっぱい踊りだした。
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子ども達の自作自演というのが結構大変だ。スタッフがいちいち子どもたちと話し合いながら撮影を進めていく。これが「キッズムービー」のやり方である。しかし簡単にはいかない。なんといっても子どもは絶対に妥協しないのだ。
ここでも彼らの言い分は「ちゃんとえさのついた釣竿でやりたい、投げるところを1カットで」。大人の気持ちとしてはどうせえさは見えないし、投げるところと釣っているカットを後でつなげはいいじゃない。
変な慣れもあって「編集で何とかなる」とどっかで思っていても、言ってることは彼らの方が正しいので反論も出来ない。
とにかく、こちらが教えられることが多い。見えないからといって手を抜いちゃいけないのだ。
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